2023年11月4日土曜日

金沢で三宅島を思う

昨日は朝から夕方まで三宅島を走り回り歩き回ってバーンアウトした。一期一会ではないけれどもう二度と来ないだろうから今日全部見ておこうと思って走り回った。昨日のブログには載せられなかったネタがいっぱいあるから、それはまたいずれネタがない日に小出しにして行こう。とにかく昨日は三宅島の唯一であろうかと思う島酒「雄山一」を飲んで酔っ払い、洗濯は明日の東急ステイでまとめてすればいいやとばかりに死に寝した。

朝6時過ぎに起床。デスクワークなどして7時前に朝食を食べて、最後の三宅島徘徊。ホテルのあたりから見ると雄山の外輪山はまた違った顔を見せる。でもこの顔が20年もすれば一変してきたのだ。活きている火山の近くに住むということはすごいことなのだなと思う。

久々の徘徊添削をしながら歩いていると(何の障害もないから徘徊添削もし放題である)、いつの間にやら海岸近くの「交通公園」に来ていた。GoogleMapにそう書いてあるので何のことだろうと思っていたが、どうもここで自動車免許の練習をするようだ。
伊豆諸島ではきちんとした教習施設は大島にしかないらしいが、こういうのもいいなあ。

都道(というより「三宅島一周道路」と言ったほうが据わりが良い)のほうに上っていくと「島役所跡」なる施設があった。三宅島唯一のかやぶき屋根の家で、かつての役所だったとのことである。ただこれ、GoogleMapによれば「24時間営業」なのである。見たければいつでも見て行きなさいよということかとは思うが、中にも入れたら怖いなと思いつつ、ホテルに戻り、昨夜サボったシャワーを浴びてチェックアウトし、タクシーで空港に向かう。

ここで(きっと本人はこれを読むことはないだろうから書いてしまうのだが)今回の(というか、最初で最後になるであろう)三宅島訪問で最も心に残ったのは三宅島交通(タクシー会社)の奥さんだった。変な意味では決してない。ご夫婦で営んでおられるタクシー会社のようで、レンタカーもやっておられる。一昨日私を港に迎えに来てくれたのがご主人だと思う。
で、会社に着いてレンタカーの手続きをしようとしたら、私の前に先客がいた。タクシー会社だけれど売店もしているようで、何かのお客さんだったのだろう。地元のおばあさんが内地の病院に行くことになったという話のようだった。元気になって帰ってきてねと声をかけていた。客の私が待っているのだけれど、だからと言ってそのおばあさんをさっさとあしらいはしない。だけど私のことも気にかけてくれて、口パクで「免許証」と言っている。
おばあさんに湿っぽくもなくあくまで明るく心から元気で帰ってきてほしいと声をかけつつ、今日初めて出会った私に明るく接してくれる。こういう人が私は大好きだ。こういう人に出会えるとその土地が大好きになる。
でまあ、今朝は9時にタクシーが迎えに来るという話だったにもかかわらず8時半過ぎに私の方から会社に行ってしまった。奥さんは戸惑いつつもそこに座ってと言ってテレビをつけてくれた。多分ご主人を急かして早めに出るように言ってくれたのだろうな。
三宅島の自然は素晴らしかったし、一人だけでもう一度来ることはないとは思うが、誰かと一緒だったらもう一度来てもいいかなと思うけれど、おそらくそういう時が来るとすればまたこの人の笑顔が見られることを楽しみに来るのだろうな。私が全国のSUKIYAKI塾を嬉々として渡り歩いているのと同じことだ。その土地の風景が見たくて行くというのも確かにあるのだけれど、あの人に、あの人たちにまた会いたいと思うから心ウキウキ行くのだ。
ともかく、三宅島に行ったら三宅交通の奥さんに会ってみてください。

さて、三宅島空港に到着してみれば、ロビーには誰もいなかった。9時50分の離陸だから9時に行けばいいだろうと思ったら、それでも早すぎたらしい。とりあえず受付カウンターに行くと予約番号ではなく名前を言ってくれという。考えてみれば20人もならないのだから名前の方が話が早い。書類に名前や住所、電話番号を記入するが、その中に体重という欄がある。小さな飛行機だからバランスを取らねばならないのだろう。知床さんが乗ったらどうなるのであろうか。

保安検査はパソコンなどを別のトレーに入れるところまではいつもと同じなのだが、それを機械に通したりせず人間がディスプレイを開いて中身を確認する。何の意味があるのかよくわからないのだが、とにかく搭乗待合室に進むと、ロビーと何が違うのかよくわからない駅の待合室のようなところだった。
やがて係員がやってきて飛行機に乗ってくださいというだけでなく、「名前の呼ばれた人から指定の席に座ってください」と言う。なるほど、そのために体重を聞いたんだよね。してみれば知床さんだったらきっと「荷物室」と言われるに違いない。

ともあれ飛行機に搭乗。間違いなくこれまでの生涯で乗った一番小さな飛行機である。
恐ろしく狭いタラップを上って指定の席に座る。CAなどいようはずもない。

席を見れば、座席の下に荷物は入れるなと書いてある。仕方がないから足元に置く。さらに前の席の背もたれにうちわが差してある。空調も何もないから確かに暑い。

機内の風景は飛行機なんだかバスなんだかよくわからない。

離陸のために滑走路の端まで移動して転回する時、ちらりと雄山が見えた。

御蔵島方向に離陸して東京方面に旋回したので、三宅島が一望できた。たった2日だったけど、感慨深い。おそらくもう来ることはないけど、それでも心に深く深く残った島だった。

この高度であればもしやと思ったのだが、雄山のカルデラの内壁がちらりと見えた。だから何だと思うかもしれないが、地質屋には「うおおおお」と言いたくなる出来事なのですよ。

少し進むと、新島が思いがけず間近に見えた。写真ではぼんやりしているけれど、この白い崖が目印だ。この島には…うーん、行かない可能性のほうが高いだろうな。

大島が一望できるところに来た。ぱっと見ると海しかないように見えるが、よく見ると大島の全景が見える。この島にはいつか行く気がする。平成ゴジラが消えて行った三原山を見ぬわけにはいくまい。伊豆半島周遊のついでに、というくらいがいいのかもな。

富士山が見えた。そういえば 新潟大学時代に伊豆半島に行ったことがあるような記憶があって、そこから富士山を見ていたな。
そんなこんなで調布飛行場に着陸。バイアさんが迎えに来てくれて、武蔵境駅まで送ってくれた。

武蔵境駅に着いて、なんだかちょっとぼんやりしてしまう。半日前までいた三宅島との落差に頭が着いていかないのだ、
中央線で新宿へ、湘南新宿ラインで大宮へ、北陸新幹線で金沢へ。めまぐるしすぎて酒でもかっくらいたくなる衝動を抑えつつなんとか金沢に到着。ホテルにチェックインして、そのままビデオカメラを買いに出る。明日のセミナー講義の録画用だが、なんてことだ、ほんの何ヶ月か前に那覇でビデオカメラを買ったばかりなのに、今また金沢で同じ買い物をしてしまった。

金沢のまちは、ちょうど三連休のまっただ中ということで、人が多い。インバウンドも実に多いし、店は繁盛していて「本日は予約で満員です」の看板を出している店が軒を連ねる。
そんな中を私は夢見心地で歩く。20年に1回噴火する火山島で暮らす人たちのことを思い出しながら。三宅交通のご夫婦が私とさほど変わらない年齢だとすると、2歳の時に三七山ができて(これはさすがに覚えていないだろうが)、23歳のときに阿古地区が溶岩に埋まり、40歳のときに火山ガスが大量噴出して全島避難して44歳でやっと島に帰れたわけである。そういう暮らしを経て、内地の病院に行くおばあさんに「元気になって帰ってきてね」と言いながら毎日朗らかに暮らしている。本当に人間の幸せはどこにあるのだろうか。

…そんなことを思いながら歩いていたら、目の前に「あしたば」という文字があったのでびっくりして立ちすくんだ。「奇跡の薬草」とある。まあ確かにそうかもしれない。あしたばといえば八丈島が有名だが、これを食べているから健康長寿という話がごろごろしているらしい。
そういえば、三宅島交通の奥さんに「三宅島土産は何がありますか」と聞いたら「うーーーーん……牛乳せんべい?」と本当に困ってしまっているので「あしたばとか?」と言ったら「どこに売ってるのかな。あれは摘んでくるもんだから買うもんじゃない」と笑っていたが、今日摘んでも明日になるともう生えているからアシタバと言うんだと聞いたことがある強い草で、あちこちに生えていて、いつでも摘んでこれるから売り物にはならいということだろう。でもそれは八丈島とか三宅島だから「どこにでもある当たり前の草」なのであって、それ以外の地域の人には「奇跡の薬草」と言われたりするわけだ。

その三宅島交通の近くに「王葬」という史跡がある。何かの碑だなあと思ってみると。

こんな説明があった。秦の始皇帝が不老不死の薬草を探しに日本に徐福を使わしたという徐福伝説にちなんだ墳墓であるらしいのだが、説明書きを読むと、その不老不死の薬草は「あしばらしい」と注釈がある。え、徐福ってはるばるアシタバ摘みに来たんだ…と爆笑してしまった私なのでした。
でもね、いつ火山が怒り出すかもしれないけれど、哺乳類はネズミとイタチくらいしかいなくて、は虫類もヘビなんかいなくて、近所の人たちと今日もほがらかに声を掛け合って、アシタバ摘んで…という暮らしもいいよね。
そういう暮らしと、北海道から沖縄までの人たちと深く関わり、年に何回か飛び回る暮らしって、デジタル時代をうまく使いこなしさえすれば両立するように思うんだよね。

4 件のコメント:

  1. 久しぶりにThe AREC的な八丈島~三宅島周遊記でしたね
    読み応えありました(^^♪

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  2. 明日葉ネタもそうですが、書ききれなかった小ネタはいっぱいあるので、また追々(⁠^⁠^⁠)

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  3. 行ってみたい三宅島🧡少しダイエット必要ですか(^^;)

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  4. いや、船なら大丈夫でしょう。^o^

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