2017年9月6日水曜日

神様、水をください

今日はオフ日。宮古島に行くのが2回目で、前回(6月)は伊良部島・下地島・池間島と島尻に行ったにとどまったので、今回は島の南の方に行こうと思ってオフ日を取ったのだ。
結果的に旧盆明けの日になったので、今日の夜に皆さんと飲み会をすることになった。オフ日を取っておいてよかった。

朝9時。今日もぎんぎら太陽である。外に出ると早速じりじりと暑い。

平良港ターミナルまで歩いて移動。すでに汗がにじむ。朝9時すぎのターミナルは閑散としていた。ここから路線バスで空港近くのレンタカー屋さんへ。レンタカーを借りていざ出発である。

宮古島の南西にある来間島を対岸にみる前浜ビーチ。朝からジェットスキーなどでにぎわっていた。

来間大橋を渡って来間島へ。集落の中を通り過ぎると竜宮城展望台という、もうなんともリアルな展望台があった。名前の由来は知らない。

前浜ビーチが対岸に見える。そして海がとてつもなくきれいだ。これといった川がない宮古島は海が汚れないからだろうか、何種類もの青が重なり合った、ため息の出る美しい海だ。

そして琉球石灰岩の海食崖?と思われる斜面下に、石灰岩に浸透した雨水がわき出すところがあって、かつての島民の貴重な水源になっていた。湧水も井戸もまとめて「ガー」と呼ぶ。これは「来間ガー」で、写真右の最上流の湧水が「一番ガー」、飲み水などに使ったらしい。そしてこの下流にあるのが「二番ガー」で体を洗ったりしたようだ。

狭い石積みの通路を挟んで「三番ガー」。洗い物用だったらしい。宮古島は基本的に琉球石灰岩に覆われ、それが風化した「島尻マージ」という赤褐色の透水性のいい土壌によって覆われる。だから雨水はどんどん地下に浸透してしまい、表流水つまり川として海に流れる水はわずか。そのため、地下に浸透した水が顔を出す崖下の湧水や井戸は貴重な水源だったわけだ。

 島の西に小さな人気のないビーチがあった。GoogleMapでは「来間島プライベートビーチ」とあるが、まあプライベートビーチのような穴場の小さなビーチだということだろう。濃い青の海と白砂のコントラストがきれいで、しばしぼーっと過ごす。

朝飯を食い損ねたのですごく腹が減ってきた。来間大橋渡って宮古島に戻ってすぐのところに食堂があった。レンタカーは1台も停まっておらず、島の人たちが使う食堂のようだ。

宮古ソバを注文。なんだかオレ、毎日1回か2回はソバを食ってるなあと思いつつ、それでもぜんぜん飽きないんだよなあと自分でも感心しつつ食った。もちろんレンゲなんてついてこない。

少し行くと、陸の方に深く切れ込んだ小さな入り江を渡った。「入江湾」という、固有名詞とは思えない名前がついていた。車から降りて近づくと、ものすごい光景が。
どうどうと流れる早瀬…ってこれは川ではない。ちょうど干潮で、入り江の中の水が海に流れ出ていく光景なのだ。干満の差がほとんどない日本海側に済んでいる私には驚愕の光景。

島の南岸沿いはリゾート地みたいになっているようなのだが、そのせいか無意味に広い歩道が作ってあった。車道よりよっぽど広いし。アダンが街路樹になっていて、実をつけていた。これ、何に使うんだ?

途中の展望台から太平洋側の海を眺める。さすがは太平洋で、リーフの端に打ち寄せる波が高い。

アナ井(アナガー)。文字通り穴の底に湧水がある。洞穴に降りていく感じで石段が地上から続いている。島ぞうりで恐る恐る降りていく。

穴の底に石組みがあって湧水が溜まるようになっている。地区の人たちが入れ替わりここに降りて水を汲んで上に上がって行っていたわけだ。大変な暮らしだったろうし、何より水は本当に大事にされたことだろう。

沖縄県指定の有形民俗文化財である「ウイピャームトゥの斎場」を見に行こうと車を走らせたが、満足に案内はないし、そのうちこんな山道を登る羽目に。他に観光客もおらず、人があまり行かないのだろう、びっくりするような蜘蛛の巣があったりして、本当にここでいいのかびびりつつ、汗をふきふき上る。

石灰岩の石積みに茅葺きの家屋があって、「ウイウスムトゥ」と説明がある。ウイピャームトゥもウイウスムトゥもさっぱりわからんが、ここに籠もって儀礼をしていたらしい。
ともかく島ぞうりで一人で来るようなところではないと思った。^^;

インギャービーチ。いやもう声を失う美しさである。
ともかく島の南岸エリアはリゾート系の施設が多くあるのだが、私はそっちにはぜんぜん興味がなくて、こういう美しい自然を眺めたり、ガーにせよウイウスムトゥにせよ、かつての生活を思わせる史跡を見たりするのが好きだ。

さらに東に行くと、ムイガーがあった。海食崖の断崖の下に湧水があって、100段以上の海岸を上り下りして水を確保していたというすさまじい所だ。
行ってみると、下ではなく上に上る階段がある。汗をふきふき上ると…

突然コンクリートが終わり、アダンを伐採した踏み跡にもなっていない空間が伸びる。ちょっと行ってみると真新しい杭が。どうやら遊歩道を延ばすために測量した後らしい。こんなところに島ぞうりで行くものではない。

駐車場に戻ると、今度は下に降りる狭い土道が目に入った。少しだけと思って降りていくと、たちまち草を手で払いのけないと進めなくなり、そのうち何かに捕まらないと降りられない傾斜になって、最後は海岸の転石ごろごろの上に出た。コンクリートの貯水タンクがあったから、昔は本当に水場だったのだろうが、今は誰も行かなくなったのだろう。

こーんな断崖である。結局ガーには到達できなかった。というか、島ぞうりで無理だって。いよいよもって汗だく、足もくたびれてきた。ほとんど現場みたいな1日になってきたぞ。

宮古島といえば世界最大級の地下ダム。その資料館があったので行ってみた。他には誰もいない。

宮古島の地質解説の模型。これはすごくすごく勉強になった。宮古島の地質は下から島尻泥岩(不透水層)、琉球石灰岩および島尻マージ(いずれも透水層)。そして島には北西~南東方向の断層が雁行していて、西に緩く傾斜しつつ、断層部分で東側がどーんと落ちている(正断層だったら)。まあつまり島尻泥岩の上面は北東に緩やかに上がっていき、断層のところでどーんと 落ち込むというのを繰り返している。その結果、北西~南東に伸びる、不透水層の「谷」が幾条もあるわけだ。
そして琉球石灰岩の中を浸透してきた雨水はこの「谷」を海に向かって流れるので、この「谷」をせき止める地下のダムを作れば水が貯められるというわけだ。
この地下ダムによって、広大なさとうきび畑のかんがいが可能になった。

もともと台風もあって降水量はある一方で、多くの雨水は川ではなく地下に浸透しているから地下水は豊富だ。地下ダムから井戸ポンプでくみ上げられた地下水はファームポンドと呼ばれる高台のでっかいタンクにためられ、ここからパイプラインであちこちのスプリンクラーに送られている。
展示資料を見ていると、本当に水で苦労してきたんだなあということがわかる。深い穴の底の井戸や断崖絶壁の下まで何度も上り下りして水を運んだり、干ばつで作物がほとんど取れなかったり。宮古島の民謡&踊りのクイチャーの起源を雨乞いに求める説もあるそうだが、実際雨乞いはしょっちゅうされていただろう。「神様、水をください」と資料の章タイトルにあった。そうだろうなあと、ガーを見てきたあとだけに実感で思う。

いやあ勉強になったわいと車を走らせていると、ちょうど近くのさとうきび畑で勢いよくスプリンクラーで散水していた。地下ダムは本当に島の人々の暮らしと生産に大きく寄与したんだなあとまた実感。これこそがインフラ整備のあるべき姿だと思う。

さらに行くと、今度は宮古島メガソーラー実証研究整備があって、派練りが並んでいた。その向こうには風力発電。
頭に桶を乗せて100段以上の階段を上り下りして水を汲んでいたムイガーがあって、その近くに地下ダムがあって、その近くに自然エネルギー施設があって…なんだか頭がくらっとした。

竹中山展望台からの眺望。海のほうではなく背後の島のほうをぐるっと撮影。いかに宮古島が平坦な島なのかがわかる。

島の東の端、東平安名崎に向かう。交差点にまもる君がいた。

東平安名崎灯台。手前の駐車場はバスにタクシー、レンタカーが並び、かき氷やジュースの店が並び、中国語がバクハツしていた。^^;

東平安名崎の左側は東シナ海、右側は太平洋である。東シナ海側にはリーフが広がる。

太平洋側はうねりが押し寄せ、波が白く泡立っている。やっぱり太平洋だなあ。

島の東岸を走ると、ところどころに展望台やビーチが点在している。こんな息をのむ美しい海をどんどん見慣れてきてしまう自分が申し訳ない。
まだ見に行きたいところはあるけれど、それは次回のお楽しみということにして車を返し、近くのドンキホーテ(宮古島にドンキがあることに驚いたが、予想どおりここも中国語があふれていた^^;)のカフェで一休みし、ちょっとPC仕事もして、再びバスでホテルの近くに戻った。

汗になった服を部屋の洗濯乾燥機で洗っている間に部屋風呂で汗を流し、さらにPC仕事をして、7時前になったのでホテル2階の居酒屋へ。7時前でまだこの風景である。
大協企画の社長さんはじめ社員の皆さん、たまたま仕事で宮古島に来ていたアグリさんと八島建設の方々総勢11人で飲み会。
最初はビールで始まって、じゃあ次は泡盛で、ということで一升瓶が出てきた。水割りだからコップに氷を入れて泡盛を入れて水を入れて…なんてことはしない。2リットルか3リットルくらいのピッチャーに泡盛をどぼどぼ入れて水をどぼどぼ入れて最初から水割りにしておいて、氷を入れたコップにこれをどくどくと注ぐ。
やがてオトーリ(御通り)が始まる。
最初に誰かが「親」となる。いつも社長が最初の親になっているようだから、おそらくその場の最も上座というか長となる人がなるのだろう。親はコップを水割り済み泡盛で満たし、口上を述べて杯を干す。そして隣の人にコップを渡して泡盛で満たす。隣の人はこれを一気に飲み、親に空のコップを返す。親はまたコップを満たして次の人に渡す。次の人はこれを一気に飲み…してどんどん回していき、親の所に戻ってきたら親は口上の補足をしてもう一度杯を干す。そして次の親を指名する。指名された親②は親①と同じように口上を述べて…と延々と親が回っていき、全員が親を務めて終わる。
だから参加者は参加人数に等しい回数+1回(自分が親の時は2回飲む)だけコップ泡盛を一気飲みする。今日は12杯一気飲みをしたわけだ。
石垣島でもオトーリ的なことは少しやったが、本場のオトーリは6月に初めて宮古島に来て初体験した。今回は2回目だったが、さすがに人数が多いぶんだけよく飲んだ。
宮古島ではオトーリ用にあらかじめ水割りにした泡盛も売っているらしい。アルコール度数は10%くらいだという。日本酒より薄いわけだが、何杯も一気飲みするわけだから、すげえなあと思う。
さらに二次会に突入。さらに飲み、カラオケで盛り上がり、ホテルに戻ったらとっくに日を越えていた。いやー飲んだ飲んだ。
宮古島の照りつける日差しの中、美しい海をいくつも見て、大汗をかきながらガーを巡り、宮古島の水のドラマを実感し、そして宮古島の酒文化も実感した。全部が「水」に関係した、実に幸福な1日だった。

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