確かにオレはここにいた

東京から島根への移動日。考えてみたら今回のセミナーツアー、講義のない日が少ない。初日の小浜から新潟への移動日だった2日はまあ別として、青森から秋田への移動日だった10日のほかは講義がないのは今日だけだ。

10時すぎに羽田空港に到着。飛行機は13時すぎだけれど、2時間以上カードラウンジにこもって添削していた。時々イネムリしたけど。^^;

搭乗口は501番。バスターミナルである。ちなみに米子空港行きの隣は岡山行き、その隣は八丈島行きだった。羽田は春霞ぎみの晴れ。
バスなので、こりゃあプロペラかな？と思っていたら意外にジェットで左右6席。

離陸。今はこういうシーンが撮影できるようになったし、こんなときにも膝の上でPCを開いていられるようになった。

雪を頂いた山が見えるけど、これが何かはわからない。東京→米子だから小浜の上を飛んだりしないかな？と思ってみていたが雲が多くてわからなかった。機中では例によってひたすら添削。

着陸態勢に入った。 窓の外には、ああなんてことだ島根半島が見えるではないか。我々大学クラスの進級論文のフィールドであり、私の修士論文のサブフィールドでもあったところだから、一目見ればわかる。
やがて飛行機は米子鬼太郎空港に到着。なんて名前だ。でも降りてみるとどこも別に鬼太郎ではない。そこまで言うなら従業員は妖怪の格好をしろと言いたい。いや、やっぱりそれはやめてくれ。

バスで松江へ。何やら急な坂を登るなあと思ったら、弓ヶ浜から中海に浮かぶ江島に渡る江島大橋、通称「ベタ踏み坂」というらしい。確かに急な坂だが、こんな道路ができていることに驚く。

ああ、あれは大根島じゃないか。私が学生の頃、つまりもう30年以上も前に陸つながりになったけれど、当時は家に鍵もかけない島だったらしい。今はどうなっているのだろうか。「大根島、右から読んだら島根大」なんて言ってたなあ。
4時前、松江駅に到着。すぎにホテルにチェックインして一息入れ、Skype面談。
18時、いつもお世話になっている島根県技術士会のSさんがホテルに迎えにきてくれた。近くの居酒屋で飲み会。
最近特に思うのだが、こうして私を呼んでくださる団体の皆さんと、特にかしこまらずに気楽に飲めるようになってきたことは本当に嬉しい。
私は「奉られる」のは大の苦手なので、仲間扱いで気楽に長くつきあってください。

わが同級生さんちゃん。年に1回、ただセミナー前の飲み会にだけやってくる。^^

〆は出雲そば。一皿もう半分ほど食べちゃってるけど、三品そば。そば、おろしそば、玉子おろしそば。私が好きなそばは、出雲そばが一番で、二番が出石そば＆越前そばなのだが、実にシアワセ。

セミナーツアーに出ると、飲み会の後でも熱いコーヒーがあればもう一度仕事ができる。
ということで、松江駅前のローソンでホットコーヒーを買った。ホテルに戻ろうかと思ったのだが、バスターミナルにベンチがあったので座り、コーヒーをちびちび飲みながらぼんやり駅を見ていたら、ふいに気づいた。
今自分が座っているこのあたりは、島根大学を受験しに来たとき、行商のおばちゃんが通りかかり、リヤカーに乗せた発泡スチロールのフタが風で飛んだのを拾ってあげたら
「だんだん」
と言われて、
「？？？」
となり、もしかしたらオレすごいところに来ちゃったのかもしれないと思った、まさにそこではないか？
あ、もしかしたらオレが泊まっているホテルのあたりは「松江大劇」があったところでは？
あ、もしかしたらさっきコーヒーを買ったローソンのあたりって、裏本売ってた店があったところでは？
…
困った。次から次へと思い出され、ついでにモノの記憶だけじゃなく、当時の気持ちの記憶、心の記憶までよみがえってきて、動けなくなってしまった。
私が大学に入学したのは1979年だった。昭和54年だ。まだパソコンも携帯もない時代だ。コンビニどころかホカ弁すらなかった。
そういう時代、私はここにやってきて、4年間を過ごした。30人の仲間達と一緒に。
もうそれから35年がたった。あのころの自分、あのころの仲間、あのころの松江のまち、全部本当にあったのだろうかと思うほど遠くぼんやりした記憶になっていたけれど、それがリアルな感覚でよみがえってきてしまって、それから30分以上、コーヒーがすっかり冷めてしまうまで私はベンチに座り込んでいた。