上根来プロジェクトのひとつ、「しがら組み」の作業日である。
朝、ご指導いただくN田先生とともに上根来へ。
思いがけずいい天気だが、やはり山の中は涼しい(というか寒い)ので、昼食用に豚汁を仕込む。先日作ったコンロを出して薪に火をつけていると、高校生を乗せたバスがやってきた。
高校生14人、先生3人、こちらのスタッフなんやかやで10人弱。
午前中は竹を割る作業である。上根来で採った太い竹を縦に3等分に割く。4等分ではフニャフニャすぎ、2等分では曲げられないので3等分なのだが、その分割くのは面倒だ。
地元CATVが撮影する中緊張しつつ作業する子どもたち。
ナタをあてがって、カケヤで叩き割り進めていく。こうやって片側だけ割れ目を入れる作業を3回繰り返して3等分する。
女子生徒もがんばる。けっこう楽しそうにやってくれるのでありがたい。
完成。これを打ち込んだ杭の間に編み込んでいくわけである。さすがに大人数でやると作業が早く、順調に午前中終了。
豚汁をみんなで食べる。高校生だから弁当も持ってきているのだが、何度もおかわりしてくれて大鍋は空になった。
午後は杭打ち。8月に間伐材を切って作った杭をカケヤで打ち込む。長さ1.5mの杭をカケヤだけで50cm以上打ち込むのは大変だろうな、子どもたちだけでは無理だろうなと思っていたのだが、なかなか上手に杭打ちができる子が多く、子どもたちだけで全部打ち込んでしまった。いやー感心した。
杭は1.8m間隔で打ち込む。法面の断面方向に直線に並んでいることが大事だ。
共同作業で竹を編み込んでいく。さすがに子どもたちは頭がやわらかく、どんどん容量がよくなっていく。
竹は曲げ反力だけで杭に密着し安定する。杭に打ち込んで固定するようなことはしない。表皮側が硬く、引張りに強いので、法尻側に表皮側(凸側)を向ける。つまり土がたまると竹を外側からではなく内側から押すようにして、表皮側の硬いところが引張力に対抗するようにするわけですね。
最後に杭の頭をそろえて完成。1.8m間隔3径間スパン=5.4mを、先週の施策2スパンに加え今日は5スパン施工して、合計7スパン、延長38mほどの土留め壁が完成した。
杭22本(間伐材)、竹8段/1本あたり3枚×7スパン=約19本。
若狭地方の山は近年シカ食害が顕著で、シカが食べないもの以外の草本類が本当に激減し、真夏でも山肌がむき出しになっているところが増えた。このため少しの雨でも土砂流出がみられるし、自然斜面やそれに近い素切りの法面は浸食がはげしく、道路には小石や土砂がいつもパラパラ落ちている。そういうところが山間地にすごく増えている。
かつては不安定な斜面や森林伐採のあとに、土留めとしてこの「しがら組み」がよく施工されていたようだが、土木の機械化の中で姿を消した。そして施工方法を知っている人も高齢化して、失われた技術になりかかっている。
だけど山地が広範囲で食害を受けて荒廃する中、機械施工だけで対応していたのではとても追いつかない。手間も時間もコストも追いつかない。
ならば専門家ではない地域住民だけでできることをやるべきではないか。行政に要望するだけでなく、自分たちの労力提供だけでできることが少しでもあるならやるべきではないか。「そのほうがいい」ではなく、「そうしないと山が荒れるのを食い止めるのはむずかしい」という状況に近くなっていると思うのだ。
そんな願いを込めてこの「しがら組み」を「新しい公共」モデル事業の中に組み込み、今回やってみたわけだが、若狭東高校とタイアップできたのは本当にありがたかった。
杭も竹も山から自分たちで切りだしてきたもの。今のグローバルなエコシステムに組み込まれていないもの。
それを使って自分たちに必要なものを作る。「地産地消」なんていう今風の言葉がないころに当たり前にやってきたもの。
なんかそういうものを忘れないようにしたいなあと思うわけですね。
今回の活動で一応ノウハウっぽいものはわかってきたので、またどこかでやりたいなあ。
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