2011年7月30日土曜日

施策には多様な面がある

試験直前なので、またひとつ問題例をあげてみよう。


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【APEC-semi練習問題9-3-3】
我が国は厳しい地形・地質・気象条件の中、常に大規模災害から小さな災害まで、あらゆる災害が発生するリスクを有している。このような国土において、古来より先人達は災害と同居しつつ生活するための知恵を重ねてきた。
近年の社会状況の変化も踏まえ、国民の安全・安心や豊かな環境を守りつつ経済発展を続けていくうえでの課題を3つあげ、建設分野としてとるべき方策について、あなたの意見を述べよ。

(問題の解説)
「古来より先人達は」というくだりに潜んでいるキーワードというか、出題者が求めているのは、リスク管理です。防災設備が施してないから危険、施したからもう100%安全というような、ステレオタイプの災害対策はもう限界で、大規模自然災害から小さな斜面崩壊に至るまで、リスクの大小という視点で管理して、限られた防災予算の配分を決定していく(選択と集中)こと、そして防災の限界以上のことは減災で対応することが方向性になります。
さらに「安全・安心や豊かな環境を守りつつ経済発展を続けていく」というキーワードからは、防災と環境保全や経済発展の両立について考察することが求められています。防災、環境、経済活性化といった個々の課題ごとにはいろいろな方策があるでしょう。しかしこれらをバランスよく両立させるためには個々の方策をどう組み合わせたらいいかがポイントになります。
その典型的な例はコンパクトシティでしょう。コンパクトシティはスプロール化した地方都市に対する方策で、たとえば脱モータリゼーションや高齢化への対処(交通弱者配慮)などの効果を期待して提案するのですが、施設が集約されているので津波に対する避難タワー機能が確保しやすく、それらが近接しているので災害弱者も避難しやすいといった防災面での機能もあります。旧市街地(中心市街地)にありがちな木造密集家屋の防災面を土地区画整理事業で改善することもできるでしょうし、それに伴い生まれるオープンスペースは防災機能も有しますし、環境改善にも寄与するでしょう。
このように、様々な施策をその主要な側面だけで単眼的に見るのではなく、多様な視点で把握して提案するという、一段レベルの高い提案が求められており、それに応えられると評価が高くなると思われます。
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とまあ、たとえば
 スプロール化→コンパクトシティ
 インフラ老朽化→アセットマネジメント
 温暖化緩和策→交通流円滑化
のように、定番的な課題と解決策の組み合わせというものがあるわけで、これは白書等を勉強すれば、まあ誰でも書けるようになる。
こういった組み合わせを書けばそれでOKというような単純な問題の出し方ではなく、ひとひねりした出題というのも、実はけっこうあったりする。
そしてそれは、たとえば昨年度の必須科目の「社会条件変化」のように、「これについて配慮しながら答えを書いてね」みたいな付帯条件として示される。
それが題意であり、これをきちんと答案に反映することで題意に応えた答案となり、定番的組み合わせを書いただけの答案に比べて一歩抜け出た答案になるわけですね。

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